「電気代の負担を減らしたい」「もしもの災害時に備えたい」――そんな暮らしの安心と、地球にやさしい脱炭素を同時に叶える設備として、いま「家庭用蓄電池」への注目が広がっており、世田谷区では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、家庭での太陽光発電や蓄電池の普及に力を入れています。

一昔前は「太陽光発電とセットで使うもの」「高価で場所を取るもの」というイメージもあった家庭用蓄電池ですが、最近では価格の低下やコンパクトな機器の開発が進んでいたり、それぞれの家庭のニーズに合わせた様々なプランやサービスが発表されていたり、家庭用蓄電池を取り巻く状況は刻々と変化しています。

今回は、UCHIKARAプロジェクトのパートナーとして区と協働している株式会社東急パワーサプライで、家庭用蓄電池の普及に取組む冨山晶大さんにインタビュー。近年、家庭用蓄電池が注目を集めている理由や、蓄電池単体でもできる活用法、社会インフラとしての新たな役割について、詳しく教えてもらいました。

記事の後半では、実際に家庭用蓄電池を設置した区民の方の声もご紹介します。災害対策や電気代節約のために家庭用蓄電池の導入を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

※この記事は株式会社東急パワーサプライへの取材に基づくものであり、家庭用蓄電池の設置等による電気代の削減を保証するものではございません。
※この記事で紹介している情報は取材した2026年6月時点のものです。

プロフィール

冨山 晶大(とみやま しょうた)さん
株式会社東急パワーサプライ 執行役員・事業企画室室長

東急パワーサプライは、2015年に東京急行電鉄(現東急電鉄)が設立した電力小売事業会社。2016年の国内電力小売市場の全面自由化に合わせた電力サービス開始以来、エネルギーと暮らしの新しい関係づくりに取組む。冨山さんは、東京電力入社後、TEPCOi-フロンティアズの取締役などを経て、現職。1,000世帯に家庭用蓄電池を無償配布する「てるまるでんちプロジェクト」を牽引し、家庭用蓄電池の新たな可能性を提唱している。
HP:https://www.tokyu-ps.co.jp/campaign/1000battery/


今、家庭用蓄電池への期待が高まる理由とは?

——冨山さんは、東急パワーサプライの家庭用蓄電池導入支援事業である「てるまるでんちプロジェクト」の牽引役だそうですね。

はい。「てるまるでんちプロジェクト」とは、東急パワーサプライが東京都の助成金を活用して、合計1,000台の家庭用蓄電池を無償でご家庭に配布・設置をするプロジェクトです。導入したご家庭は特別な操作をすることなく、「停電対策」と「電気代の節約」、そのうえ「社会貢献」まで同時にかなえることができます。

——それは魅力的ですね。そもそもなぜ今、家庭用蓄電池なのでしょうか?

これまでは、自宅の太陽光発電設備で発電し、余った電気を蓄電池にためて使えるよう、この二つをセットで導入するケースが主流でした。ところが近年、自然災害の頻発や在宅避難の必要性の高まりから「停電対策」としてのニーズが高まっているのに加え、電気料金の高騰を受けて「電気代節約」のための装置としても注目されるようになってきています。一つひとつを詳しく見ていきましょう。

停電しても蓄電池があれば、ライフラインを維持できる

——では、まずは「自然災害に対する備え」から伺います。太陽光発電の設備がない住宅でも、蓄電池を設置していると停電時にどのくらい電気が使えるのですか?

電気が使える時間は蓄電池の残容量と家電の使用量次第なので一概には答えられませんので、おおよその目安でご説明しますね。例えば、私たちが昨年配布した蓄電池は12.7kWh(kWh:1kWの電力を1時間使用した場合の電力量の単位)ありますが、フル充電状態で、一般的な家庭の冷蔵庫・テレビ・照明1台に加えて、スマートフォンの充電を34時間ほど続けられる計算になっています。

——なるほど。蓄電池の容量が大きければ使用時間は長く、小さければ短くなりますね。エアコンなど、使う家電が増えればその分、使用時間が短くなるというわけですね。

その通りです。ちなみに、「12.7kWh」という容量は家庭用としてはかなり大きなものです。大きさ・重さ・価格などのバランスから、5〜6 kWhくらいがこれまでの主流ではないでしょうか。

安い時間帯の電気をためておくことで、電気代を節約できる

——では次に、「電気料金の高騰」による蓄電池のニーズの高まりについてお聞きします。太陽光発電設備がなくても、蓄電池を設置すれば電気代の削減に役立つのでしょうか?

結論から言えば、蓄電池だけで電気代を節約できる方法があります。なぜ節約できるのか。その背景には、東日本大震災以降の「再生可能エネルギーの急速な拡大」と、電力自由化後の「市場連動料金プランの登場」という二つの要因があります。

この二つの背景を詳しくご説明する前に、前提知識として先に「電気の需給の仕組み」について説明させてください。電気は大規模な貯蔵が難しいことから、「つくる量」と「使う量」を常に一致させなくてはいけないという特性があります。需要と供給のバランスが崩れると周波数が維持できなくなり、最終的には大規模停電が起きてしまうのです。そのため送配電事業者は、その時々の需要に合わせた細かな供給量の調整を、まさに秒単位で行っています。

出典:なるほど!グリッド 出力制御について | 資源エネルギー庁

そうした前提を踏まえつつ、再エネの拡大と蓄電池の関係について見ていきましょう。2011年の東日本大震災以降、政府のエネルギー政策が大きく変わったこともあり、太陽光発電や風力発電などの再エネが急速に拡大しました。ですが、再エネはお天気に左右されることが多いため、火力発電や原子力発電と違って発電量の予測がつきづらく、需給のコントロールが容易ではありません。

そうした理由から、晴天などで再エネが大量に発電されて、停止可能な火力発電所などを停止・抑制してもなお供給が需要を上回りそうな場合には、電力系統の安定を保つために、再エネ発電を部分的に停止・抑制する必要も出てきます。これが、昨今ニュースでよく聞かれる「再エネ出力制御」です。

そこで、家庭用蓄電池の出番です。再エネの出力が抑制される時間帯に家庭用蓄電池に電気をためておけば、再エネの有効利用となり、その電力を日没後需要が伸びてくる時間帯に放電することができます。そのご家庭が契約している料金プランによって事情は異なるものの、再エネの供給が多い時間帯は電気の金額も安い傾向にあるため、電力の価格動向に応じた制御により、電気代の削減が期待できます。

市場連動料金プランに対応した制御で、電気料金をもっとお得に

——では、「市場連動料金プラン」と家庭用蓄電池の関係についてはいかがですか?

2016年、電気の小売業への参入が完全に自由化された「電力自由化」によって、新たな電力会社による多様な料金メニュー・サービスが登場しました。その一つが「市場連動料金プラン」で、30分ごとに変動する日本卸電力取引所(JEPX)での電気料金単価が反映されるプランです。

天気のよい昼間など、太陽光発電などにより電気の供給が大幅に増える時間帯(電気が安い時間帯)に、家庭用蓄電池に電気をためて、夕食の支度など電気の需要が増える時間帯(電気が高い時間帯)に、ためた電気を使う。市場連動料金プランを契約して家庭用蓄電池を設置していれば、このようにして電気代を節約できます。

出典:東急パワーサプライ提供資料より

——電気代はどのくらい節約できるのですか?

季節やご家庭での電気の使い方によって異なりますが、2025年度に「てるまるでんち」を設置したご家庭の実データから試算した結果、平均の電気代削減率がもっとも大きかったのは2026年4月で、最大3,294円/月、平均1,589円/月が削減されました。

(事務局からの一言解説)
市場連動料金プランをはじめとした様々な電力プランについては、こちらの記事でも解説しています。ぜひご覧ください。
>>電気代の仕組みを専門家が解説! 原油高の影響は? | UCHIKARA

家庭用蓄電池は、「小さな仮想発電所」として
社会全体を支えるインフラへ!

——家庭用蓄電池単体で使うメリットについて、よく理解できました。ところで、最初にお話しいただいた「家庭用蓄電池が社会貢献にもつながる」のはなぜでしょうか?

先ほど発電量と消費量のバランスが崩れないよう、電力の需給バランスを安定させることが大切であり、家庭用蓄電池はそれに一役買う存在であることをご説明しました。

再エネの発電量が多くなりすぎた際に行われる「出力制御」は、本来なら使えたはずの電気を十分に生かしきれていない状態とも言いえます。そうした電気を社会全体で有効活用していくことは、これから再エネが増えていく時代にますます重要になります。

家庭用蓄電池が各家庭に普及すれば、そうした「余った電気の受け皿」を地域の中に数多く持てるようになります。つまり家庭用蓄電池は、各家庭の備えであるだけでなく、社会全体の電力を支える役割も果たしうるのです。

各ご家庭の蓄電池の容量は小さくとも、それをインターネットでつないで一つの大きな電池のように一括制御し、余った電気はため、足りないときにそれを使うようにすれば、都市全体の電力安定化に貢献できます。

この考え方は「VPP(仮想発電所:Virtual Power Plant)」と呼ばれていて、家庭や工場などに分散している発電設備や蓄電池をまとめて制御し、一つの発電所のように機能させる仕組みです。「てるまるでんちプロジェクト」は、その考え方を家庭用蓄電池で具体化したものです。

出典:VPP・DRとは | 資源エネルギー庁

VPPを家庭用蓄電池で実現させようという構想は、私自身、以前から温めていたのですが、蓄電池の小型化が進んだことや通信環境が整ったこと、東京都が「家庭における蓄電池導入促進事業」として助成金を設けたことで、「てるまるでんちプロジェクト」を企画することができ、今回ようやく実現できました。

——それは壮大ですね! 「てるまるでんちプロジェクト」では、実際にVPPの取組みが行われているのですか?

はい。2026年3月に首都圏で初の再エネ出力制御がありました。それと連動する形で、遠隔制御下にある家庭用蓄電池に一斉に電気をためる「充電制御(上げDR ※1)」を行いました。これにより最大充電電力422kW、3日間の累計充電電力量で2,107.5kWhもの再エネを有効活用することができました。これは一般的な電力メニューだと約1tものCO2(※2)が排出される電力量で、今回はそれらを再エネで賄うことができたことになります。

また、その際に充電した電力をピーク時間帯に使えるよう操作することで、蓄電池ご利用の皆さまの電気料金を、3日間合計で17,674円削減することができました。

出典:東急パワーサプライ提供資料より

※1 充電制御(上げDR):家庭用蓄電池の一括制御で電気を一斉にためることにより、電力の需要を自らつくり出すこと。
※2 環境省 電気事業者別排出係数 -R6年度実績- (R8.6.4一部更新時点) 東京電力エナジーパートナーメニューM(残差)調整後排出係数0.000452(t-CO2/kWh)により算出

「てるまるでんちプロジェクト」では、さらにもう一つ、家庭用蓄電池に重要な働きを持たせています。ご家庭に配布した蓄電池の電気は各家庭で使うのを基本としていますが、政府が電力ひっ迫警報を発令した緊急時には、蓄電池内の電気を電力系統に戻す「逆潮流」を行います。困ったときは、みんなで力を合わせて乗り切ろう――。そんな発想に基づいた仕組みになっているのです。

——なるほど、それは頼もしいですね。最後に冨山さん、この世田谷区で家庭用蓄電池を普及させていく意義について教えてください。

世田谷区は東京都でもっとも世帯数が多い一方、スペースや屋根の向き、耐荷重の問題から太陽光発電パネルを設置できない住宅も少なくありません。だからこそ、設置するだけで「停電対策」と「電気代節約」を両立でき、さらに街の電力安定化にも貢献できる家庭用蓄電池の単体活用には、大きな可能性があると思うんです。今後、太陽光や風力などの再エネを無駄なく有効活用して、脱炭素化を加速させるためにも、家庭用蓄電池を活用したエネルギー有効活用の取組みが、広く普及していくことを願っています。

——家庭用蓄電池による「強い街づくり」に期待しています。ありがとうございました。

家庭用蓄電池で、安心・おトク!
設置した世田谷区民の「生の声」をご紹介

冨山さんのお話を伺って、家庭用蓄電池を設置すれば、普段の生活を変えることなくさまざまなメリットを得られることや、家庭用蓄電池が安心な街づくりを支える存在として期待されていることが、よく分かりました。

さて、実際に「てるまるでんちプロジェクト」で家庭用蓄電池を設置した世田谷区民は、どのように感じているのでしょうか。区民の方に導入の理由や使い心地、電気代節約の実感などを詳しくお聞きしました。

大切なペットのために、導入を決意。
安心感があり、電気代も節約できて大満足!

「わが家の大切な猫のために導入を決めました。うちは夫婦共働きで日中留守になることが多いので、もしも停電すると、給水機やペットカメラが使えなくなりますし、暑い夏にエアコンが停まったりしたら猫が可哀相ですよね。災害時は交通事情などですぐに家に帰れない可能性もありますから、しっかり備えたいと思いました。
通常、家庭用蓄電池は外壁の地面に設置するそうですが、わが家には周囲にスペースがないため、規定よりも小型の蓄電池を2階のベランダに設置しました。そのため工事にはやや時間がかかりましたが、半日ほどで終了しました。
設置後、幸い停電は起きていないため、具体的に停電時に役立ったということはありませんが、『備えあれば憂いなし』で安心感がありますね。また、電気代については、前年に比べて確かに安くなっているので大満足です」(Kさん:男性 40代)

その他にも、「子どもが小さいため、停電時にも電気を使えることが安心につながっています」(Aさん:男性 30代)、「値上がりする電気代への対策として導入を決めました」(Bさん・女性・50代)などの声が寄せられています。

家庭用蓄電池の導入を検討してみませんか?

今回ご紹介した東急パワーサプライの「てるまるでんちプロジェクト」のように、民間事業者による初期費用を抑えた設置プランや、地域のエネルギー循環に貢献できる新しい仕組みが広がっています。

世田谷区では、こうした民間主導の先進的なプロジェクトと連携・協働しながら、区民の皆さまの脱炭素で災害に強い暮らしへのシフトを応援しています。
家庭用蓄電池を導入する方法は、民間事業者が提供する様々なプラン(購入・リース・シェアリング等)を利用するほか、ご自身で機器を選定して購入する方法など、ご家庭の状況に合わせて多様な選択肢があります。
ご自身の住宅のタイプや災害対策への考え方に合った導入方法を見つけてみてください。

今回ご紹介した株式会社東急パワーサプライのてるまるでんちプロジェクトの詳細はこちら

「電気代が安い時間帯に電気をためる」「電気代が高い時間帯に電気を使う」という機能を生かすことで、生活スタイルを変えることなく「災害への備え」と「電気代の節約」、そして「社会的意義」を両立できる家庭用蓄電池。

現在東急パワーサプライでは、2026年度の「てるまるでんちプロジェクト」を受付中で、プロジェクトの責任者でもある冨山さんよりコメントをいただいています。

このキャンペーンで家庭に設置する蓄電池はすべて東急パワーサプライが遠隔制御します。電力運用のプロが「ためる(充電)」と「使う(放電)」を最適にコントロールするため、家庭での操作は一切不要というメリットもあります。

また、今年度は、設置する蓄電池をご利用者の住環境に合わせて小型化するなど、より多くの家庭が参加しやすい仕様になっていますので、是非ご検討ください。

※本記事に掲載している民間事業者のサービス内容や料金、契約条件等については、直接事業者へお問い合わせの上、ご自身の責任においてご判断ください。

>>「てるまるでんちプロジェクト」2026年度受付中 | 東急パワーサプライ