「ここ数年、夏の暑さが厳しくなっている……」と感じる方は多いのではないでしょうか。事実、2025年6〜8月の日本の平均気温は気象庁の観測史上もっとも高く(※1)、2023年、2024年に続いて3年連続で記録を更新しています。また、熱中症による救急搬送者数も10万人を超えて過去最多となるなど、私たちにとって夏の熱中症対策は欠かせないものとなっています。

今回は、世田谷保健所の増渕和幸さんと、長年、熱中症対策の啓発活動をしている大製薬株式会社の仲川徹さんに、「今すぐできる備え」として身を守る行動や注意点を教えてもらいました。そして記事後半では、「熱中症対策と省エネ」を両立させるポイントをUCHIKARAが提案します。過酷な夏を乗り切るために、ぜひこの記事をご活用ください。

※1:1991〜2020年の30年間の平均を基準値とした場合、2025年は+2.36℃、2023年・2024年は+1.76℃。
※この記事で紹介している情報は取材した2026年6月時点のものです。

プロフィール

増渕 和幸さん
世田谷保健所 健康企画課 健康危機管理担当係長

世田谷保健所では、区民の皆さまの健康づくりと、安全で安心して暮らせる地域社会づくりに向けて、区民の健康と安全を守ることを第一に、健康づくりの推進や、生活習慣病等の予防、熱中症対策などに取り組んでいます。

仲川 徹さん
製薬株式会社 ニュートラシューティカルズ事業グループ 首都圏第一支店 東京営業所 営業3課 課長補佐 熱中症対策アンバサダー※
※熱中症対策アンバサダーとは、大製薬主催の「熱中症対策アンバサダー講座」認定者です。

製薬は「世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する」を企業理念として、ポカリスエットなど様々な製品ラインナップを展開しております。私は世田谷区の担当として、世田谷保健所の皆さまと一緒に熱中症対策の取り組みを通じて、区民の皆さまの健康の維持・増進のお役に立てるよう日々活動しております。
HP:https://www.otsuka.co.jp


熱中症はなぜ起こる? 3つの要因

まずは、熱中症の基礎知識です。熱中症とは、体内の水分や塩分のバランスが崩れて体温調節機能に障害が起きることで、体内に熱がたまって起きる様々な症状のことです。めまいや筋肉痛といった軽度な症状から、頭痛、吐き気、倦怠感、さらには意識混濁やけいれんなどの重度な症状に至り、死亡する場合もあります。

熱中症が起きる要因として考えられているのは、「環境」「身体」「行動」の3つです。人間の身体には、体温が上がっても皮膚表面の温度を上げたり汗をかいたりして体温を外に逃がす仕組みがあり、自然と体温調節を行っています。

しかし、以下の要因によって、身体の体温調節がうまく働かない時、熱中症のリスクが高まります。

●環境要因
気温が高い/湿度が高い/風が弱い/日差しが強い

●身体要因
高齢者や乳幼児、持病などによって体温調節が不十分/体調不良/脱水状態で汗が出ない

●行動要因
激しい運動/長時間の作業/適切な水分補給をしない

【出典】環境省:熱中症の基礎知識

次のブロックからは、世田谷保健所の増渕さんと大製薬の仲川さんに、すぐにできる熱中症対策についてお聞きします。

世田谷区民は注目! 世田谷区が行う熱中症対策

——まずは、世田谷保健所の増渕さんにお聞きします。昨年度の夏の暑さについて教えてください。

昨年2025年、東京都は最高気温が35℃を超える猛暑日は29日(前年は20日)、最低気温が25℃を下回らない熱帯夜の日数は55日(前年は47日)と、非常に厳しい暑さとなりました。29日もの猛暑日は観測史上最多です。また、2025年の夏に熱中症で救急搬送された方は区内で446名と、深刻な健康被害をもたらしています。

——気温が高いとその分、熱中症の危険が高くなるのでしょうか?

気温の高さだけが、熱中症リスクに関係しているわけではありません。熱中症の危険度を判断するために使われる国際的な指標である暑さ指数「WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)」は、気温、湿度、日射量などをもとに算出しており、湿度も大きく影響しています。暑さ指数が33以上の極めて危険な状況が予測されると、環境省と気象庁が共同で「熱中症警戒アラート」を発表します。2025年の東京都における熱中症警戒アラート発表日数は40日と、こちらも過去最多でした。

【出典】環境省:日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)より改編

——世田谷区では、熱中症対策としてどのような活動をしていますか?

暑い日に外出する際に、気軽に休息や水分補給ができる「お休み処」を開設しています。2011年度から始まった施策で、今年は6月15日から9月30日までの間、区役所や区民センターといった公共施設や薬局、整骨院・接骨院などご協力いただいている民間施設にコーナーを設けています。

お休み処は世田谷区が配布している冊子「涼風マップ」でご紹介する他、区のHP上の地図アプリでも公開しています。施設の入り口には目を引く黄色いのぼり旗を設置しているので、ご高齢者や小さなお子さまにも分かりやすいと思います。

>>「せたがや涼風マップ」(令和8年度版・PDF) | 世田谷区

お休み処ののぼり旗

>>熱中症予防「お休み処」をご利用ください | 世田谷区公式ホームページ

——大製薬さまとも、協力して対策を行っているそうですね。

はい。2022年に「区民の健康づくり及び健康に関する安全・安心確保等に関する連携協定」を締結し、大製薬さんとの官民連携による熱中症対策に取り組んでいます。

製薬では、これまで発汗により失われる水分・電解質補給の重要性を広く啓発しており、熱中症対策についても、800以上の全国の自治体との健康に関する包括的な連携協定を締結して、地域に根ざした熱中症対策の発信を行ってきました。

世田谷区は全国的に見ても、熱中症対策にとても力を入れている自治体です。これまで、熱中症対策を呼びかけるチラシやポスターの作成・配布、世田谷区オフィシャルチャンネル(YouTube版)での啓発動画の制作・配信など、多種多様な施策を一緒に実施しました。

>>熱中症予防啓発動画「気象予報士と学ぶ!2026年の熱中症対策」 | 世田谷区・大製薬

今日から始めよう! 熱中症を防ぐ「水分補給」のコツ

——ここからは、具体的な熱中症対策について伺います。まずは水分補給について詳しく教えてください。

水分補給のタイミングは、のどが渇いてからでは遅いといわれています。のどの渇きを感じるのは体内の水分が減るとともに電解質のバランスが崩れるためで、この時点ですでに脱水が始まっているからです。

成人の身体では、1日に2.5Lもの水分が出入りしています。飲み物だけでなく食べ物から摂取する水分も多いため、暑さで食欲がなくなったり、高齢で食が細くなったりすると、食べ物からの水分摂取量は減ってしまいます。一方、排泄する水分は尿がもっとも多く、皮膚呼吸や呼気などとしても体外に出ていきます。実はさきほど体から出入りする水分量を2.5Lといいましたが、この出入りの計算には汗は含まれていないため、当然、かいた汗の分は追加して補う必要があります。

——1日にどのくらいの量の水分を、どのタイミングで補給すればよいですか?

一度に大量の水を摂取しても体液が薄まってしまい、余分な水分は尿として排出されてしまうため、脱水の対策にはなりません。「水分補給はこまめに」を念頭におき、1日の中で水分補給のタイミングを決めて習慣化することをおすすめします。

例えば、朝起きた時に1杯、朝食の時に1杯、ランチに1杯、夕食に1杯、お風呂の前に1杯、寝る前に1杯と、それぞれコップ1杯200mLずつの水分を1日に6回、1.2Lを目安に摂取するとよいでしょう。

——水以外のお茶やジュース、コーヒー、またビールなどのお酒でも構いませんか?

コーヒーや緑茶の場合は飲んだ量や個人差もありますが、カフェインが含まれているため体内の水分を外に排出しやすくする利尿作用がある方もいらっしゃいます。また、お酒に含まれるアルコールにも同様に利尿作用があります。どちらも嗜好品として飲むにはよいですが、普段の水分補給には水や麦茶、汗をかいた時は塩分を含んだイオン飲料が適していますね。

——イオン飲料なら、水分だけでなく塩分も補給できますよね?

はい。汗をかくと、体内から水分だけでなく塩分(ナトリウム)も一緒に失われます。ナトリウムは電解質(イオン)の一種で、身体の細胞の働きなど重要な役割を担っています。大量に汗をかいたときに水分のみを補給すると、体液の電解質のバランスが崩れてしまうため、注意が必要です。

——なるほど。ちなみに、イオン飲料には塩分だけでなく糖分も含まれていますが、なぜでしょうか?

水分は腸から吸収されますが、糖分を同時に摂取すれば、身体に吸収されるスピードが速くなるからです。公益財団法人日本スポーツ協会では、暑熱環境下で運動を行う際には、15~20分ごとに150~250mLの電解質と糖質を含む飲料を飲みやすい温度で摂取することを勧めています。補給する飲料は、0.1~0.2%の食塩と糖質を含むものが効果的としています。

今日から始めよう! 熱中症を防ぐ「エアコン活用」のコツ

——水分補給の他に、熱中症対策としてするべきことはありますか?

熱中症というと屋外でかかるイメージが強いですが、実は室内こそ危険です。2025年の世田谷区の熱中症死亡者の約8割が、屋内での死亡でした。エアコンを使っていない・置いていない、閉め切った室内環境では部屋に熱がこもり、体内の熱を外へ逃がしにくくなります。くれぐれも「家にいるから大丈夫」と油断せず、日中・夜間を問わず、一つの目安として、28℃以上になったら室内の湿度や体調を確認し、無理のない範囲で冷房を適切に使うようにしましょう。

特に高齢者の方は暑さを感じにくく、汗もかきにくいため、体内に熱がこもりやすい状態にあります。「今は暑くない」「自分は大丈夫」といった自身の感覚のみに頼らず、温湿度計を室内に置いてこまめに確認し、エアコンを活用するようにしてください。

——よく分かりました。もし熱中症になってしまったら、どうすればよいですか?

熱中症は、「自分では気づきにくい」という特徴があります。そこで、熱中症の自覚症状が出る前に起こる「脱水症状」を見分ける、簡単な方法をご紹介します。

1. 握手をして手が冷たくなっている
2. 手の甲をつまんで戻るまでに3秒以上かかる
3. 爪を押して赤みが戻るまで2秒以上かかる

この他にも、尿の色が茶色っぽくなっている場合も、脱水を疑ったほうがよいですね。熱中症の症状としては、めまい、大量の発汗、立ちくらみ、筋肉痛、生あくび、筋肉のこむら返りなど。

こうした症状が出たら身体を冷やすことが最優先になるので、エアコンが効いている室内など涼しい場所へ移動して、衣服をゆるめ、もし冷たいものがあれば脇の下や足の付け根、首回りなど太い血管が走っているところを中心に、体全体を冷やしてください。屋外であれば全身に水をかけるなどして、速く体を冷やします。あわせて、イオン飲料や経口補水液で水分を補給します。

——熱中症対策の専門家として、もう一歩進んだ対策があれば教えてください。

近年、「プレクーリング」という概念が提唱されています。活動前に身体を冷やしておくことで、その後の体温上昇を抑制する方法です。プレクーリングには、イオン飲料を液体と細かい氷のスラリー状にした飲料「アイススラリー」が効果的です。熱中症対策の新しい選択肢として、労働現場のみならず日常の様々なシーンでの活用が期待されています。

——最後に、この夏を元気に乗り切るために、世田谷区民に向けたメッセージをお願いします。

規則正しい生活、十分な睡眠、栄養バランスの良い食事を心がけ、作業中は休憩時間を決めて定期的な水分補給をしてください。特に屋外などの暑熱環境で作業する方は、「絶対に無理をしないこと、頑張り過ぎないこと」が大切です。

熱中症は、正しい知識と行動でリスクを限りなく下げることができます。家の中でも起こりますので、迷わずエアコンを使って、室温を下げ、大切な命を守りましょう。

●熱中症対策のまとめ

・「水分補給はこまめに」がポイント。1日に1.2L(コップ約6杯)を目安に水分を摂取しよう。

・汗をかいた時の水分補給には塩分を含んだイオン飲料を。暑いときはあらかじめカラダを冷やす「アイススラリー」の活用も方法のひとつ。
イオン飲料やアイススラリーは、お近くのドラッグストアなどで購入できる商品もあります。大製薬株式会社のホームページはこちらからご確認ください。

・「熱中症は室内こそ危険」と心得て室内の湿度や体調を確認しながら、無理のない範囲で冷房を適切に使いましょう。

・自分の体の感覚を過信せず、温湿度計を室内に置いてこまめにチェックしよう。

家庭で「熱中症対策×省エネ」を両立させるポイントをご紹介

世田谷区では、液晶温度計と温度ごとの対策がひと目でわかる「熱中症予防シート」を、高齢者をはじめ区民の方にあんしんすこやかセンターで配布しています。

ここまでのお話で、水分・塩分補給やエアコンの適切な使用、「無理をしない」ことを重視した熱中症対策が分かりました。とりわけ屋内での熱中症予防は、しっかりと意識したいところです。2025年の世田谷区での熱中症死亡者の約8割が屋内での死亡だとお伝えしましたが、死亡者はすべて70歳以上で、そのうち約半数が「エアコンがありながら未使用」だったことが分かっています。高齢のご家族がいる方は、注意して見守っていきましょう。

熱中症予防では、暑さを我慢せず、必要なときにエアコンを使うことが大切ですが、一方で夏の電気代や電気使用量が気になる方も少なくないのではないでしょうか。そこでここからは、UCHIKARAが熱中症対策と省エネを両立するために、エアコンの上手な使い方や家庭でできる設備の見直しポイントを、ご紹介します。

●省エネエアコンで電気代を抑えながら快適な生活を!

最新のエアコンは昔のものよりも省エネ性能が高く、電気代を抑えながら冷房を使うことができます。特に長く使っているエアコンからの買換えは効果が大きく、2009年の製品と2024年の製品で比較すると年間消費電力量は211kWhの省エネとなります。これは年間の電気代に置き換えると、約7,152円お得になる計算です。(省エネ家電のメリットや選び方は? 節電効果やお得な制度を家電量販店店長が解説 | UCHIKARA より)

【出典】東京都「家庭の省エネハンドブック2025年度版

また、東京都の「東京ゼロエミポイント事業」では、対象家電への買い替え等に対してポイントが付与され、特に満65歳以上の方などが対象となるエアコンの購入では、最大80,000ポイント分の助成が受けられる、大変お得な制度になっております。

東京ゼロエミポイント【公式】

※対象製品や登録販売店、設置場所などの条件があるため、購入前に公式サイトで最新情報をご確認ください。

省エネ家電のメリットについてはこちらの記事で解説しています。

●外気熱をブロックして「暑くなりづらい家」を住まいの断熱で実現!

断熱性の高い窓やドア等に住宅を改修することで、夏の強い日差しや外気の熱が室内に入りにくくなり、「夏にも暑くなりづらい家」にすることができます。外からの熱を遮断すると共に、家の中の冷気も逃がしづらくなることから、エアコンも効率よく使えるようになります。

世田谷区では、窓の断熱改修などを対象とした補助事業を実施しており、補助金を活用した住宅改修もぜひご検討ください。

令和8年度世田谷区エコ住宅補助金のメニューとなる住宅改修については、こちらの記事で解説しています

窓断熱リフォームのメリットについては、こちらの記事で解説しています

●今すぐできる!熱中症×省エネ対策

購入や工事などの費用をかけなくても、今日からできる工夫があります。まずは、エアコンを効率よく使いながら、室温の上昇を抑えることから始めてみましょう。

① エアコンのフィルターをこまめに掃除する
フィルターの汚れを取り除き、室外機の吹き出し口の前に物を置かないようにすることで、冷房効率の低下を防ぎます。

② 扇風機やサーキュレーターを併用する
冷房とあわせて風を循環させることで、設定温度を下げすぎなくても涼しさを感じやすくなります。

③日差しを室内に入れすぎない
レースカーテンやすだれを活用し、部屋に差し込む日差しを抑えましょう。外出時も、昼間はカーテンを閉めておくことで、室温の上昇をやわらげることができます。

【出典】東京都「家庭の省エネハンドブック2026」

健康を守る冷房使用から、家庭の脱炭素アクションへ

熱中症をしっかり予防して家族の健康を守ると同時に省エネなどによるCO2の削減で脱炭素を目指す――。UCHIKARAでは、「熱中症予防」と「脱炭素化」の両立を大切に考えています。 さらに、地球温暖化そのものへの対策として、家庭で使う電気を再エネ由来の電力に切り替えることも、脱炭素につながるアクションの一つです。

再エネでんきへの切り替えは、直接の熱中症予防ではありませんが、地球温暖化対策につながる家庭でできる脱炭素アクションの一つです。次の世代の地球環境を守るために、できることから行動してみませんか。

>>世田谷区再エネでんき切り替えキャンペーン | UCHIKARAプロジェクト

※還元額・実施期間は上記期間・金額のもと、キャンペーン実施各社で異なります。
※条件等は特設ページ及びキャンペーン実施各社のページでご確認ください。