電力使用量が増える夏季は、電気料金の上昇を実感しやすい季節です。近年、燃料価格の高騰や国際情勢の影響により、電気料金は変動しやすい状況が続いています。
今回は、脱炭素実現に向けて多彩なエネルギーソリューションを提供する株式会社エナーバンクの田邉友章さんにインタビュー。電気料金の仕組みや各社各様の料金プランを解説いただきながら、電気代や再生可能エネルギーとの向き合い方について教えてもらいました。「電気代の上昇が気になっているけれど、対策がわからない」「夏に備えて料金プランを見直したい」「再エネへの切り替えを検討している」という方は、ぜひご覧ください。
※再エネ切替補助金は、年度途中で内容変更や受付終了となる場合があります。この記事で紹介している情報は、取材した2026年4月時点のものです。
田邉 友章さん
株式会社エナーバンク 西日本エリアマネージャー
エナーバンクは、「利用者目線のエネルギーサービスを実現する」ために生まれた2018年創業のスタートアップ。オークション形式で電力を気軽に選べるサービス「エネオク」など、複雑な電力の仕組みによる情報格差を解消し、シンプルかつ最適なエネルギー調達へと導くサービスを提供している。田邉さんは、地域密着型電力会社の勤務を経てエナーバンクに入社。
HP:https://www.enerbank.co.jp/
じわじわと上がり続ける電気料金。そのわけは?
まずは電気料金の変化について、データで確認してみましょう。経済産業省のデータによれば、一時期の国際的な燃料価格の下落や新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、電気料金が下がった年もありますが、傾向としては年々上昇しています。家庭向け電気料金は、2010年度と2024年度を比較すると約53%も値上がりしています。
【出典】経済産業省 資源エネルギー庁「電気料金平均単価の推移」
こうした電気料金上昇の背景には、燃料価格や円安の影響、制度に関わる費用など、いくつもの要因があります。最近は、中東情勢の悪化による燃料価格の高騰が懸念されています。
では、この電気料金高騰のリスクに、どのように対処すればよいのでしょうか? 次のブロックからは、電気料金の基本的な仕組みとリスクへの対処法について、エナーバンクの田邉さんに教えてもらいます。
押さえておきたい! 電気料金の基本構造
——田邉さん、はじめに電気料金の構成について教えてください。
一般的な電気料金は、大きく分けると「①基本料金+②電力量料金+③再エネ賦課金」の3つで成り立っています。
【出典】経済産業省 資源エネルギー庁「月々の電気料金の内訳」
「①基本料金」は電気を使っても使わなくてもかかる固定料金で、家庭の住宅設備などに応じて1契約ごとに設定されたアンペアで決まります。例えば東京電力であれば、現在10A(アンペア)なら約312円、30Aなら935円です。
——次に「②電力量料金」とは何ですか?
設定された電気の単価と使用量によって決まる料金です。「電力量料金単価」の算定方法は電力会社やプランによって異なりますが、大手電力会社では段階的な固定料金を設定しているものが多く、例えば東京電力では、最初の120kWh(kWh:1kWの電力を1時間使用した場合の電力量の単位)までが第1段階料金、121kWh〜300kWhまでが第2段階料金、301kWh以上が第3段階料金となります。
また、使用量に応じて、化石燃料の国際価格によって設定される「燃料費調整額」も算定されます。電力会社やプランによっては、「燃料費調整額」を含まないものや、電力料金単価が「固定単価」の他、「市場連動単価」を設定しているものもあります。
——なるほど。最後に、「③再エネ賦課金」とは何でしょうか?
正式名称を「再生可能エネルギー発電促進賦課金」と言います。太陽光発電や風力発電など、国が「再エネ」と定めた発電方法を普及させるために全国統一単価で課される料金です。そのため電力会社間での単価の差はありません。
電気料金を左右する「燃料費調整額」とは?
——「燃料費調整額」について、もう少し詳しく教えてください。
先ほど再エネによる発電が増えているとお話ししたものの、現時点で日本の電力は、約7割が火力発電によってまかなわれています。火力発電に用いられるLNG(液化天然ガス)・石炭・石油といった化石燃料は海外から輸入されており、その価格は為替や国際情勢などの影響を受けやすいため、燃料費調整額として調整できるようにしています。
イメージとしては、燃油価格の変動によって日本発の国際航空料金に適用される「燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)」のようなものです。
——わかりやすいです。例えば現在のイラン情勢(2026年4月時点)は、燃料費調整額にどのような影響を与えているのでしょうか?
イラン情勢は原油価格の上昇を引き起こしており、その影響でLNGの価格も上昇しています。
ただし、原油価格が大幅に上昇したからといって、その後すぐに燃料費調整額が引き上げられるわけではありません。燃料費調整額は5カ月前から3カ月前の平均値から導き出されるため、その反映にはタイムラグがあり、速度も金額も市場価格に比べると緩やかに変化するのです。例えば3月の原油価格の上昇は、6月以降の燃料費調整額に影響していきます。もちろん、急遽イラン情勢が解決して原油価格が下がった場合も、燃料費調整額への影響にはタイムラグがあります。
電力自由化で何が変わった? 新電力会社にまつわる、よくある不安
——ところで、ここ数年の料金プランの多様化は、電力自由化がきっかけですよね。あらためて電力自由化について教えてください。
戦後、日本ではエリアごとに電力会社が定められたことで、全国どこでも電気を不自由なく使えるようになりました。しかしそのために独占状態となり、価格競争がありませんでした。
世界では、欧米を中心に1980年代から電力自由化が進みました。日本でも欧米をモデルにして2000年度から自由化を始め、2016年以降は電気の小売業への参入が全面自由化されました。自由化によって、家庭や商店を含む全ての生活者が、電力会社や料金プランを自由に選択できるようになり、それに伴い料金プランやサービスの多様化が進んでいます。
——電力自由化以降、「新電力はすぐに停電する」などの不安を聞くことがあります。実際のところ、こうしたトラブルは起こり得ますか?
電力が家庭に供給されるまでの道筋として、「①つくる(発電)・②送る(送電)・③売る(小売)」という3つのパートがあります。自由化されたのは最後の「③売る(小売)」の部分。つまり、各発電所でつくられた電力が、送配電事業者によって電線などを通して家庭へ運ばれるという仕組み自体は変わっていません。
ですから、新しい電力会社だからといって停電しやすいわけではありません。世田谷区であれば、東京電力パワーグリッドという東京電力ホールディングスのグループ会社が「②送る(送電)」を担っているので、これまでと同じように電線などを通じて各家庭に電気を届けています。
——それは安心しました。では、新しい電力会社が倒産した場合はどうなりますか?
もし契約している電力会社が倒産しても、突然電気が止まることはありません。国のガイドラインにより、電力会社からは約2週間前までに解除通知を行う決まりとなっているため、新しい会社と契約を結ぶ猶予があります。すぐに新しい電力会社が決まらない場合でも、各地域の電力会社のセーフティネットがあるので、継続して電気が供給される仕組みが設けられています。
※電気事業法にて、一般送配電事業者(世田谷区の場合は東京電力パワーグリッド)に正当な理由がある場合を除く電力供給義務が課されています。
電気料金プランの種類を比較〜「単価固定プラン」「一部市場連動プラン」「市場連動プラン」
——次に、電力会社が提供しているプランについて質問です。プランの大まかな種別と構成、特徴などを教えてください。
私たちが普段使っている資料に沿って、ご説明しますね。大きく分けると、「単価固定プラン(図の①〜③)」「一部市場連動プラン(図の④)」「市場連動プラン(図の⑤)」の3タイプがあります。
まず、「単価固定プラン(図の①〜③)」について説明すると、先に解説した燃料費調整額は「燃料調整費(図の濃いブルーの部分)」と記載しています。燃料調整費は①のように、大手電力会社(東京電力等)の料金体系に合わせているプランもあれば、②のように電力会社独自の燃料調整費を設定しているプランもあります。さらに、③のように燃料調整費がないプランもあります。
このタイプの特徴は、電力量料金が単価固定のため、いきなり大きく電気料金が変動しないことです。変動する場合も緩やかなため、電気料金が上がることが予想されるときは、例えば省エネ家電に買い替えるなど、今後のために備える時間的な猶予があります。
——なるほど。次に、図④と⑤の市場連動型について教えてください。
図⑤の「市場連動プラン」は、電気の市場価格の変動が直接単価に反映されます。あまり知られていませんが、電気は日本卸売電力取引所(JEPX)で需要と供給などによって市場価格が決まり、30分ごとに変動しています。季節やカレンダーによっても変動しますが、大まかな傾向としては太陽光発電によって電気が供給される晴れの日の昼間は安く、夕方から夜にかけてもっとも高くなります。そのため、電気を使う時間帯を工夫することで電気料金を抑えられる点が、大きな特徴です。
図④の「一部市場連動プラン」は、「①〜③単価固定プラン」と「⑤市場連動プラン」の中間です。市場価格によって変動しますが、一定期間の平均など調整が入るため、⑤よりも急激に変動することはありません。
——ちなみに、もっとも多く選ばれているプランはどれですか?
現時点では、「①〜③単価固定プラン」がボリュームゾーンです。電力自由化後も電力会社を乗り換えていない家庭が多く、また、新電力会社でも料金プランは従来の大手電力と同様のケースが多いことが、その理由です。
「市場連動」という言葉は急に料金が上がるイメージがあり、敬遠される人が多いようですね。ですが、単価固定プランであっても燃料調整費は上がる可能性がありますし、化石燃料価格の上昇などはさまざまな形で料金に反映されるため、市場価格の影響を受ける点は変わりません。
また、家庭ごとに電気の使い方が異なるため、電気料金を抑えるための最適なプランも異なります。
——燃料調整費がないプランも、燃料高騰の影響は受けるのでしょうか?
はい。燃料調整費がプランの中になくても、間接的に他の費用に含まれている可能性があるため、「影響なし」とは言い切れません。
再生可能エネルギーに切り替えるメリットは?
——最後に、「電気料金」と「再エネ」の関係性について質問です。火力発電ではなく再エネプランの場合でも、燃料価格高騰の影響はありますか?
詳しくご説明すると、電力会社によって電源構成(電力をつくるエネルギーの種類)が異なります。現在多くの電力会社で提供している再エネプランは、「再エネ100%」と表示されていても、実際には旧来の電気を供給しつつ、日本卸電力取引所(JEPX)などが発行している「非化石証書(再生可能エネルギーの証書)」を購入して、「実質再エネ」としている場合もあるんです。
とはいえ、再エネ由来の電源の比率が高ければ、燃料費高騰の影響を受けにくいケースもあります。また今後、再エネ化が加速することで、現在よりも燃料価格高騰の影響を受けにくいプランが提供されることも期待できます。
——ここまでのお話を踏まえ、再エネプランに切り替えるメリットについて教えてください。
まず料金高騰リスクの面からお話しします。確かに国際情勢など外的要因が入りにくいプランを選ぶことで、変動リスクを下げる可能性はあるものの、「再エネプランを選んだから料金高騰を抑えられる」という直接的なメリットは現状は考えにくいです。
しかし、再エネプランを選択することで再エネそのものの需要を高めることは、長期的な視点で見たら大きな意義があります。需要が高まれば当然、再エネへの投資は増えていきます。国全体で再エネをさらに推進していくことで、将来的に価格の引き下げが期待できますし、国際的な影響を受けやすい化石燃料由来の電力の使用を減らすことにより、電気料金の安定化につながる可能性があります。
また、再エネプランは家庭で使用する電気のCO2排出量が計算上「0」になるため、「環境に貢献できる」という点も非常に重要です。
——最後に、再エネプランを含め、それぞれの家庭に合ったプランの選び方について、アドバイスをお願いします。
ここまでご説明してきた通り、電気料金上昇のリスクは、各家庭に適したプランを選ぶことで抑えられます。また、再エネを選ぶことで、将来的な電気料金の安定につながる可能性もあります。
そのためにまずは、自分の家庭の電気の使い方をチェックしてみることが大切です。電気を「どのくらい・どのように」使っているかを見える化すること。そして家族のライフスタイルを踏まえ、電気の使用量とよく使う時間帯は変更可能かどうかなどを検討してみてください。
そのうえで、各社のプラン選びを検討します。その際、現在の料金プランがどのように価格変動するかの見極めが重要になりますから、現在のプランと検討プランの両方について電力会社のサイトなどでよく確かめる必要があります。契約書や約款を読むと説明が記載されていますが、わかりづらい場合は、当社のようなアドバイザー会社に相談いただくとよいでしょう。
——田邉さん、ありがとうございました。
家庭の電力プランの見直し、はじめてみませんか?
田邉さんの解説で、電力自由化によって生まれた電力会社各社のさまざまな料金プランの仕組みや特徴がよくわかりました。今回ご紹介した内容をきっかけに電気代の仕組みを知り、ご自身のライフスタイルや考え方に合った料金プランを選ぶヒントになれば幸いです。日々の暮らしと密着した「電気」だからこそ、少し視点を変えて見直してみることが、家計だけでなく環境への配慮にもつながっていくと思っています。
また、自宅の料金プランを変えた場合の料金イメージを試算できるように、世田谷区では再エネでんきシミュレーションサイトを運営しています。無料でお使いいただけますので、ぜひお試しください。
>>CO2も電気代も! 5秒で簡単チェック! | UCHIKARAプロジェクト
【料金プランの見直しをお考えの方へ】キャンペーンのお知らせ
令和8年6月1日(月曜日)より、世田谷区では「再エネでんき切り替えキャンペーン」をスタートします。UCHIKARAプロジェクトのパートナーである電力会社各社が、再エネ電力への切り替えを行った区民の皆さんを対象に、最大15,000円分の還元を行うキャンペーンです。
〈手続きは簡単〉
Step1:以下のページより各社のキャンペーン内容を確認し、切り替えたい電力会社を決める。
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Step2:切り替えたい電力会社のページから、対象電力プランへの切り替え申請を行う(区役所への申請は不要)。
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Step3:各社が定める条件で還元を受けられる。
>>世田谷区再エネでんき切り替えキャンペーン | UCHIKARAプロジェクト
キャンペーンは令和8年9月30日(水曜日)まで。「再エネをはじめてみたい」という方は、ぜひこの機会をご活用ください。
※還元額・実施期間は上記期間・金額のもと、キャンペーン実施各社で異なります。
※条件等は特設ぺ―ジ及びキャンペーン実施各社のページでご確認ください。